メディア掲載情報

media

2013.08.02

メディア掲載情報

Webサイト「KAIKEI NET」に掲載されました(2013.8.2)

【トップ会計人が語る】社員の成長こそが寡占化時代を生き抜くカギ!

会計業界の今後

この業界の人で私と同じように感じている人も少なくないと思いますが、特にここ数年、会計業界は変化の兆しを見せています。それは、税理士業界参入者の減少と業界の寡占化です。

税理士業界参入者の減少は2000年代から現れ始めていました。税理士試験の受験者数を見れば一目瞭然で、減少に歯止めがかかっていません。特に若年層は希少な存在になっていますから、どこも人材不足に悩まされています。入社してくれた新人は貴重な戦力として大切に育てていきたいと思っています。以前なら、たくさんの人を採用し、ついてくることができた人材だけを残せばいいという会計事務所もありました。当時はそれで正しかったのかもしれませんが、今はその真逆だと私は思います。
離職率の高さは法人の運営において致命傷になりかねません。離職率を抑えるためには、どのような環境を整えるべきか。一人ひとりが本当は何を求めているのか。そうしたことを考える重要性はますます高まっています。

もうひとつの業界の寡占化ですが、これもある意味で歴史の必然といえるかもしれません。1991年以降、中小企業の廃業率が開業率を上回っており、情報化社会の進展に加えて、社会保険の強制加入が進めば、法人の減少スピードは今後も一層早まるはずです。そうなると、会計事務所の数はそれ以上の速さで減少するでしょう。市場競争は熾烈になり、成功を収めるところとそうでないところとの明暗ははっきりと分かれ、結果として寡占化が進むと思います。9割がお客様を減らし、残り1割が猛烈に売上を伸ばしていくようになってくるでしょう。私としては、ここ5年ではっきりとした勝ち負けがついていくのではないかと考えています。
競争が熾烈になると、若い人材の労働時間を長くし、低コストでなるべく多くの利益をあげようとする事務所が増えますが、それでは離職率が上がり、やがて淘汰されてしまうと私は考えています。経営者の立場からすれば理解できなくもないのですが、だからといって「仕方がないじゃないか」というのでは困ります。採用面接をしていて、「前のところは夜12時まで働くのが当たり前でした」「事務所から徒歩10分以内のところに部屋を借り、毎日寝るためだけに往復していました」というような人が増えており、ちょっとまずいなと感じています。業界全体がそうなると人材不足に拍車がかかり、結果的に自らの首を締めることになってしまうでしょう。これからの時代は、人材の流動性が高まり、いい事務所にいい人材がやってくるようになります。そのため当事務所では、そんな無茶な働き方をしないでも済むような体制を整え、一人ひとりが成長でき、やりがいを感じてもらえるよう配慮しています。そうすることで、若い方はもちろん、経営悪化で急に辞めさせられた中堅~ベテランの会計人の方にも興味を持っていただけているようです。
厳しい話をしましたけれど、他の士業と比べれば税理士業界は恵まれている方でしょう。有資格者が資格を生かせるのはもちろん、無資格者でも勉強しながら普通に生活ができる給料をもらえます。また、女性が活躍しやすい業界でもあり、TOTALでも入社後に結婚(社内結婚3組を含む)、子育てをしながら活躍しているスタッフがたくさんいます。さらにすばらしいのが、お客様から「ありがとう」と感謝していただけること。お客様とベクトルが基本的に一緒なんですね。お客様がよくなれば、私達の報酬も上がりますし、とてもすばらしい仕事だと思います。
お客様からの要望を総合的に応え、そして私どもも含め関係者全員がWIN-WINになるために、これからも「TOTAL」な業務を提供したいと考えています。

開業後から現在に至るまで

今でこそ一人ひとりの個性を活かし、適材適所を心がけるような体制を整えていますが、以前は売上アップをがむしゃらに進めていた時期がありました。
独立直後はお客様を獲得する方法もわかりませんでしたが、3年もすると営業のコツがわかってきて、私が営業に回ればほぼ確実に仕事が獲れる、既存顧客からの紹介も自然と拡大するという状況になり、元の規模も小さかったですから、創業7年目までは前年比160%近い勢いで拡大していきました。私はさらに事務所を成長させようと営業に回る日々で、その頃は家族と一緒に御飯を食べた記憶もなく、まだ幼かった2人の子供を風呂に入れてあげたこともありません。このため、妻から「年に5日だけでいいから家族のために時間をください」と泣かれたこともあります。家族だけでなく、事務所のスタッフと向き合うこともほとんど無い日々が続いたある日、不満を募らせたメンバーが私を糾弾しようと画策し、話し合っている現場を偶然目撃してしまいました。結局数ヶ月のうちに3分の1のスタッフが去っていき、さすがに反省しました。せっかく集めた仕事もさばききれなくなりましたし、疑心暗鬼になってしまって自律神経もボロボロになってしまいました。その時に救ってくれたのが、健康診断を専門にしているお客様で、「このままだと、あと数カ月で死ぬよ」といわれ、著名なマッサージ師の方を紹介してくれました(お客様に助けていただくことも多いですね)。
そこで気づいたのは、「営業はもちろん大事だけれど、それ以上にスタッフ一人ひとりが幸せじゃないとこの仕事は上手くいかない」ということ。会計事務所のお客様にとっては、所長ではなく直接の担当者が事務所の顔です。職員一人ひとりが楽しくないといい仕事もできないんです。それがわかってからは職員が働きやすいように事務所内部の環境改善に熱意を注ぐようにしました。

その後に推進したのが、業務の文書化、標準化、マニュアル化です。当事務所では、たとえば法人税の申告書の作成では20ページ800のチェック項目を設け、そのマニュアルをきちんと履行すれば誰がやっても一定以上の品質になるようになっています。マニュアルというと批判的にとらえられる方もいますが、細かな作業に頭や時間を使うよりも、専門知識の獲得、クライアントやスタッフ間のコミュニケーションなどに能力を発揮したほうがいいと私は考えています。ノウハウを活かしたマニュアルをベースとして、その上で個性を活かす働き方を実現することが、スタッフの幸せにつながるのではないかと。
以前に私が犯してしまった大失敗の一因は、「たとえスタッフのためを思っての営業活動だったとしても、その意図をしっかり説明しないと、自分の考えを押し付けているように思われてしまう」ということでした。だからもっと丁寧に説明しようと意識しています。巻き込まれて退職した人には今でも申し訳ない気持ちでいっぱいですが、あの経験から学んだことは非常に大きかったと思っています。
お陰様で、離職率は極端に下がってきました。事務所の成長率は年率60%から20%にまで下がりましたが、おおむね順調に成長しています。事を急いで息切れしないよう、地固めしながらゆっくりと成長し、今では秋葉原、新宿、船橋と着実にエリアを拡大しています。

経営について

業務の文書化、標準化、マニュアル化は、一人ひとりの業務内容を改善するだけでなく、離れた事務所でもやり方を共通化でき、グループ運営にもプラスに働いています。私の目が届きにくい部分は管理職の方にお願いすることになりますが、税理士業界は組織管理のスキルを持つ人は多くありませんから、①管理職人材の確保や、②研修による既存スタッフのスキル向上が課題です。その点はまだまだですが、埼玉、神奈川、東京の西部、千葉などとグループをさらに拡大していくに伴い、充実させていきたいと考えています。この業界は社員が500人もいれば最大手ですけど、一般的な企業で考えれば500人程度の社員数は中小企業と同レベル。そう考えれば、組織管理のスキルといってもそれほど難しくないのかもしれません。

以前、私は組織の代表として悩んでいました。私は情熱で皆を引っ張っていくタイプではありませんし、面白いことをいって場を和ませるような性格でもありません。部下の中には生まれついてのリーダータイプの者がいて、「もっと人柄で惹きつけなければダメですよ」なんて諭されたこともありました。私は学生の頃に「よろず評論家」とアダ名を付けられていて、あらゆる物事の事実や数字の裏を取るのが好きで、性格も参謀・評論家タイプなんですね。だからカリスマ性を求められると困ってしまいますし、自分にはトップは向いていないのではないかと長らく思っていました。
しかし、様々な経営の現場を見ていく中で、背中を見せて引っ張るやり方では30人くらいまでの組織が限界だということがわかりました。それ以上の組織を作るならば、大人数を統制するための理念・ルール、進むべき方向を示すことが大事になるわけで、その点は私にも適性がないわけではないので、ある意味ホッとしました。今は、自分に合った自分なりのリーダーを目指せばいいと思っています。
よく目標とする会計人は誰ですか?と質問されるのですが、意識しているのは辻・本郷税理士法人の本郷先生です。同じ早稲田大学の先輩ですし、実際お会いした印象でも非常に気さくな方でしたので。本郷先生のセミナーに参加した際、講演の直前に、本郷先生が横にフラッとお座りになり、いきなり「君、何年目?スタッフ何人?」と話しかけられました。なんと直球でわかりやすい方だなと(笑)。その後も10分くらいしゃべってくれるわけです。シャイで、話は分析的で、いい意味でシニカルなところがあって、恐縮ながら私と似たところがあるなと感じました。業界トップの方ですから、色々な面で参考にさせていただいております。

今後はスペシャリスト、マネジメント、営業、企画など、当グループ内で職員が希望する職種を経験できるような仕組みづくりや、年齢や経験年数に見合った教育方法の導入、福利厚生の完備などについて、引き続き着手していこうと考えています。たとえば産休・育休は当然で、当事務所には今度、一人で4回目の産休をとる女性がいますし、男性で育児休暇を取得した例もあります。産休・育休は、過去に13人、延べ18回の実績があります。家庭が落ち着かなければ、仕事も落ち着いてできませんからね。男性社員は全員税理士になってもらおうと思っていて、試験休みも設けています。最近は、官報合格者も連続して輩出しています。
このご時勢に安定して成長できていることから、「(営業について)何か特別なことをやっているのですか?」と問われることもありますが、変わったことはなにひとつありません。一つひとつ、できることを愚直に積み重ねることが結果として他との差別化となり、成長につながっているのではないかと考えています。とにかく、ウチのスタッフはみな楽しそうに仕事をしてくれていて、今後もその環境を守って行きたいと心から思っています。

カイケイ・ファンをご覧の皆様にひと言

サイトをご覧の若手の方には、ひとまず35歳くらいまで、とにかくがんばりましょうとお伝えしたいです。仕事と勉強の両立は大変ですが、その歳までどれだけ頑張れたかが、その後の人生を大きく左右するからです。どんな苦労も将来のためだと思って、歯を食いしばってください。税理士試験は先が見えなくなるほど長く、いろいろ悩んでしまうものですが、努力したことはムダになりません。
また、税理士資格を取ると徐々に勉強しなくなる人が多いのもこの業界の特徴です。伸ばすべきスキルは山のようにありますから、試験に合格した後も日々勉強を続けていってほしいと思います。目の前の業務をただこなしているだけでは時代の変化に対応できません。50歳を過ぎて昔のやり方が通じなくなった税理士の方から「何をしたらいいかわからない」と相談を受けて、返答に窮したことがあります。年齢を重ねるほど変化に対応しづらくなってきます。長く良い仕事をするには、何年経っても常にスキルを磨く努力が不可欠です。同時に主体的に自分でやるべきことを見つけ、仕事を楽しめる人が強いと思います。
会計人としての人生をどのように歩むかは、今の選択にかかっています。明るい未来を目指して、努力を続けてほしいと思います。

掲載元リンク