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2024.03.29

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生命保険文化センター様のHPにて「生前贈与と相続」についてエッセイを執筆しました(2024.03)

生前贈与と相続

2024(令和6)年1月から贈与税の改正が施行されました。贈与税には、贈与税額を1年単位で計算する「暦年課税」方式と、贈与時には特別控除額(累計2,500万円)まで贈与税がかからず、相続発生時には、相続財産に加算され相続税の対象となる「相続時精算課税」方式があります。今般の改正では、「暦年課税」方式につき、相続財産への加算期間が延長された一方で、「相続時精算課税」方式につき、基礎控除や選択後の申告不要の制度が新設されるなど、2つの制度でそれぞれのメリット・デメリットを均衡させるような方向性が見受けられ、贈与を受ける方は、個々の事情に応じて、よりメリットのある課税方式を選択しやすくなったといえます。そして、今回の改正に伴い、財産を相続時に相続人に相続させるのではなく、生前に財産の一部を贈与する生前贈与の注目度も高まっています。

1.生前贈与の特徴

生前に贈与を行い財産の一部を相続前に渡すことで相続する財産を圧縮することができ、相続税が課税される場合は、相続税を軽減する効果があるといえます。また、生前贈与は、贈与をする人と贈与を受ける人との合意によって成立するので、贈与をする人は相続の発生前に、渡したい人へ渡したい財産を確実に渡すことができます。例えば、家業の会社を継ぐ長男に会社の株式を生前贈与する、日ごろ何かと面倒を見てくれる長女にお金を生前贈与するなどのケースがあります。また、贈与を受け取った人は早い段階で贈与された財産を活用することができます。

2.相続財産圧縮を目的とする際のポイント

生前に贈与を行うことにより、贈与者の財産が減り、結果として相続財産が減少し、相続税を軽減する効果が期待できる場合があります。暦年課税、相続時精算課税それぞれについてポイントは以下のとおりです。

(1)暦年課税
①早い時期から贈与を行う
贈与者が逝去し、相続が発生した場合は、相続発生前一定期間の贈与財産が相続財産に加算されます。今般の改正で2024(令和6)年以降の贈与からその期間が順次延長されることとなっており、なるべく早い時期の贈与がおすすめです。

②多くの人に贈与を行う
贈与税は、贈与を受けた人に課税されます。すなわち基礎控除額(110万円)も贈与を受けた人ごとに適用が可能です。したがって、例えば1人が500万円の贈与を受けた場合は贈与税が課税されますが、5人が100万円ずつ贈与を受けた場合は贈与税がかかりません。このように、多くの人に贈与することにより贈与税額の総額を抑えつつ、相続財産の圧縮が見込めます。また、例えば孫など相続人とならない見込みの方に贈与し、見込みどおり相続発生時にその孫が相続人とならない場合は、その贈与財産は相続財産に加算されることはありません。こうした点からも、贈与をする場合は範囲を広げて検討することがおすすめです。

③相続税と贈与税の負担を比較して贈与額を検討する
基礎控除額を超え贈与税が課税される場合でも、相続税の負担と比較すると税負担が有利な場合があります。例えば、1年で310万円の金銭贈与をした場合、贈与税額は20万円となりますが、贈与金額全体に対する税負担の割合は約6.5%です。相続税が課税される場合は、最低の税率が10%となりますので、こうした例からも贈与税、相続税それぞれの負担の比較が重要であることがお分かりいただけると思います。

(2)相続時精算課税
相続時精算課税は、原則として相続発生時には、「相続時精算課税」方式を選択以後の贈与財産が相続財産に加算されるため、相続財産圧縮の効果は限定的です。ただし、毎年の基礎控除額110万円は、暦年課税の場合と異なり、贈与時から相続発生時まで期間にかかわらず、適用されますので、状況によっては一定の圧縮効果が見込めます。

また、特別控除額が大きく贈与税の負担が比較的軽くなるため、多額の財産を一括して贈与しやすい課税方式です。贈与財産が相続税の対象となる際は、贈与時の価額で相続財産に加算されるため、相続時精算課税方式で、将来、値上がりが見込めそうな財産を早めに贈与する場合には、結果として相続税の軽減効果があるケースもあります。また、例えば、同族会社で、自社株を後継者である子などに贈与して早期に経営権を委譲するなど、税負担軽減以外の目的での活用も増えています。

注目を集める生前贈与ですが、実行する場合は2つの課税方法を十分に検討したうえで、より良い方法を選択されることをおすすめします。

掲載元リンク

公益財団法人生命保険文化センター https://www.jili.or.jp/kuraho/essay/2024/9529.html